
無題
amazarashi
-R-
無題
amazarashi
-
1
木造アパートの一階で 彼は夢中で絵を描いていた
-
2
描きたかったのは自分の事 自分を取り巻く世界のこと
-
3
小さな頃から絵が好きだった 理由は皆が褒めてくれるから
-
4
でも今じゃ褒めてくれるのは 一緒に暮らしている彼女だけ
-
5
でも彼はそれで幸せだった すれ違いの毎日だけど
-
6
彼女はいつもの置手紙 桜模様の便箋が愛しい
-
7
気づいたら夜が明けていた 気づいたら日が暮れていた
-
8
気づいたら冬が終わってた その日初めて絵が売れた
-
9
状況はすでに変わり始めてた 次の月には彼の絵は全て売れた
-
10
変わってくのは いつも風景
-
11
誰もが彼の絵を称えてくれた 彼女は嬉しそうに彼にこう言った
-
12
「信じてた事 正しかった」
-
13
絵を買ってくれた人達から 時々感謝の手紙を貰った
-
14
感謝される覚えもないが 嫌な気がするわけもない
-
15
小さな部屋に少しずつ増える 宝物が彼は嬉しかった
-
-
16
いつまでもこんな状況が 続いてくれたらいいと思った
-
17
彼はますます絵が好きになった もっと素晴らしい絵を描きたい
-
18
描きたいのは自分の事 もっと深い本当の事
-
19
最高傑作が出来た 彼女も素敵ねと笑った
-
20
誰もが目をそむける様な 人のあさましい本性の絵
-
21
誰もが彼の絵に眉をひそめた まるで潮が引くように人々は去った
-
22
変わってくのは いつも風景
-
23
人々は彼を無能だと嘲る 喧嘩が増えた二人もやがて別れた
-
24
信じてた事 間違ってたかな
-
25
木造アパートの一階で 彼は今でも絵を描いている
-
26
描きたかったのは自分の事 結局空っぽな僕の事
-
27
小さな頃から絵が好きだった 理由は今じゃもう分からないよ
-
28
褒めてくれる人はもう居ない
-
29
増える絵にもう名前などない
-
30
気付けばどれくらい月日が過ぎたろう その日久々に一枚の絵が売れた
-
-
31
変わってくのは いつも風景
-
32
その買主から手紙が届いた 桜模様の便箋にただ一言
-
33
「信じてた事 正しかった」
