
地獄タクシー
吉澤嘉代子
Saya_
地獄 タクシー
吉澤 嘉代子
-
1
穏やかな昼下がり、
-
2
私はタクシーに乗って空港へと向かっておりました。
-
3
レースの手袋に滲んだ赤黒い染みを隠して、
-
4
重い鞄を抱きしめた。
-
5
ねえ、もうじき自由になれる。
-
6
神様がいたならきっと嫌われていたでしょう。
-
7
窓のそとを見遣ると、豊かな麦畑の黄金が
-
8
それはそれはそれはそれは美しい中、
-
9
運転手が言ったのです。
-
10
「お客さま」「はい」
-
11
「貴女」「はい」
-
12
「貴女、もう地獄に落ちてますよ」「え」
-
13
地獄タクシー タクシー 魂をたくし
-
14
地獄タクシー タクシー 釜の底をゆこう
-
15
月曜日のニュースは、失踪した女の事件でもちきり。
-
-
16
なんでも女は亭主の首を持って逃げたのだと。
-
17
物騒な世の中なもんだ。俺にはまるで無縁の話だが。
-
18
踵を返してタクシーに乗りこんだ。
-
19
そういえば今朝の記憶がない
-
20
どうやってここに来たんだっけ
-
21
バックミラーに映らない俺に運転手が言ったのです。
-
22
「貴方、もう地獄に落ちてますよ」
-
23
いつにでもどこにでもお迎えしましょう
-
24
タクシーがあなたを運びます
-
25
いつまでもどこまでもお迎えしましょう
-
26
ここまで落ちたならもう戻れない
-
27
地獄タクシー タクシー 地獄のすがたは
-
28
地獄タクシー タクシー 日常にある
-
29
だれが気づくというのだろう
-
30
地獄タクシー タクシー 地獄行きのタクシー
-
-
31
地獄タクシー タクシー 至極の選択肢
-
32
地獄タクシー タクシー (支度しい!) いま行くし!
-
33
地獄タクシー タクシー 魂をたくし
-
34
地獄タクシー タクシー この釜の底をゆこう
